「高輪ゲートウェイ」駅について。なぜこんなに騒いでいるのか、過去の公募・弊害についても調べてみました

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・・・ついにウェイ系の駅が登場しましたね。 

 

平成30年12月4日、JR山手線・京浜東北線の新駅が、高輪ゲートウェイ駅になることが決定しました。しかし、ある世論調査では、8割以上の人がこの駅名に対し、反対的です。なんでこんなに騒いでいるのか、自分なりに調べてみました。

 

 

 

JR東京都区内初のカタカナ駅。成り立ちを紹介

鉄道唱歌の時代より歌われる高輪・芝浦

JR東日本は、この地について「古来より街道が通じ江戸の玄関口として賑わいを見せた土地」として説明しています。言わずもがな、この街道は東海道であり、現在の国道15号に当たります。泉岳寺交差点付近にはその遺構である高輪大木戸跡が残っています。高輪大木戸は、かつて伊能忠敬が地図を作る際の測量基点となりました。

 

そしてその付近には、赤穂浪士の墓があることで有名な、泉岳寺があります。京急線の駅名にもなっていますね。その光景は鉄道好きなら誰もが一度は耳にしたことがあろう「鉄道唱歌」、その二番の歌詞にも泉岳寺・高輪ゲートウェイ駅付近と思われる情景が歌われています。

鉄道唱歌 歌詞

1.汽笛一声新橋を はや我が汽車は離れたり

   愛宕の山に入り残る 月を旅路の友として

2.右は高輪泉岳寺 四十七士の墓どころ

  雪は消えても消え残る 名は千載の後までも

(以下略)

 

ちなみに泉岳寺とは反対側(芝浦側)は、今でこそ埋め立てられていますが、当時はすぐ海岸線でした。その海岸は芝浜と言いまして、古典落語「芝浜」の舞台になったところです。今回は芝浜の話ではないので、噺の中身は省略しますが、芝浜の浜は地理的には高輪ゲートウェイ駅ではなく、現在の田町駅のあたりにありました。そして芝浜の沖のあたりは現在は埋め立てられて、芝浦と呼ばれています。高輪ゲートウェイ駅からも地理的にも近いところです。

 

近代

1872年、日本初の鉄道路線である東海道線の新橋〜横浜間が開業。その新橋〜品川間にできるのが、今回の駅なのです。

1930年、横須賀線の電化・電車運転に伴い、田町電車区田町車両センター)という車両基地が作られました。

1968年、泉岳寺駅が開業し、京急線との相互乗り入れを開始しました。

1971年、西日暮里駅が開業し、これが戦後最初、また昭和期で唯一開業した山手線の駅となります。

 

品川開発プロジェクトと高輪ゲートウェイ

時代は平成。国鉄は分割民営化され、JRが発足しました。往時は様々な寝台列車が走っていましたが、競合する新幹線・夜行バス・航空機の整備が進み、寝台列車が相次いで廃止されて、日中寝台列車を留置するためのスペースも不要なものとなりました。そこで2010年代ごろでは、東京都区内の基地設備や車両留置場所の見直しを行いました。2013年、田町車両センターは、東京総合車両センターの田町センターという風に扱いが変わり、規模が縮小して、13ヘクタールもの大きな用地が発生しました。

 

その翌年、2014年6月3日、新駅の設置が発表され、また13haもの用地を「グローバル ゲートウェイ 品川」というコンセプトで、多様な交流から新たなビジネス・文化が生まれる街づくりを目指して、現在も工事中です。

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https://www.jreast.co.jp/press/2016/20160903.pdf

建築家には、新国立競技場や渋谷駅で有名な隈研吾さんを迎え、コンコースから屋根まで通り抜ける大きな吹き抜け、日本の伝統的な折り紙をモチーフとした屋根、そして木と光の感じられる、日本の魅力が詰まった駅を作っていきます。

 2016年8月〜9月にかけて、山手線の全駅に駅ナンバリング対応の駅名標が設置されましたが、高輪ゲートウェイに当たる「JY26」「JK21」については予約が取られていたので、駅ナンバリングには違和感はありません。

そんな新駅は、2020年春に開業予定です。

 

「高輪ゲートウェイ」駅名決定、賛否両論

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駅名選定にあたり、2018年6月5日〜30日に公募を行いました。公募のあと、JR社内検討した結果、「高輪ゲートウェイ」が満場一致で決定されました。

選考理由としては、JRとしてはこういう意見を持っております。

この地域は、古来より街道が通じ江戸の玄関口として賑わいをみせた地であり、明治時代には地域をつなぐ鉄道が開通した由緒あるエリアという歴史的背景を持っています。 新しい街は、世界中から先進的な企業と人材が集う国際交流拠点の形成を目指しており、新駅はこの地域の歴史を受け継ぎ、今後も交流拠点としての機能を担うことになります。 新しい駅が、過去と未来、日本と世界、そして多くの人々をつなぐ結節点として、街全体の発展に寄与するよう選定しました。

 参考:http://www.jreast.co.jp/press/2018/20181201.pdf

 

応募総数は約6万4千件、種類の総数は1万3千種類となりました。公募の順位と票数は、上から順に、

順位 駅名 票数
1位 高輪 8348票
2位 芝浦 4265票
3位 芝浜 3497票
4位 新品川 2422票
4位(同率) 泉岳寺 2422票
6位 新高輪 1275票
7位 港南 1224票
8位 高輪泉岳寺 1009票
9位 JR泉岳寺 749票
10位 品田 635票
130位 高輪ゲートウェイ 36票

 となっているようです。

高輪・芝浦・泉岳寺は近隣の住所、港南は新駅の住所が東京都港区港南であるため、品田は品川と田町の間であるからということでしょうか。

 

「センスない」「画期的」などの意見

この横文字交じりの駅名については、やはり賛否両論あるようですが、やはり世間は反対派の人が多いようで、カンニング竹山さん、デヴィ夫人など著名人からも反発の声が上がっています。

Jタウンネットが実施した調査では、95.8%の人が「高輪ゲートウェイ」に対し「別の名前に変えたほうがいいと思う」と答えています。

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明らかな違和感、Twitterなどで批判続出

くらげさん(@kurage60)は、高輪ゲートウェイの皮肉を込め、山手線の全ての駅名を漢字+カタカナにした路線図をTwitterに投稿しました。これには8.8万のリツイート、16万のいいねを得ました。 

news.livedoor.com

 

この駅を駅名標に収めようと思った時に、やはり少し冗長すぎて入れづらい。これを入れやすくしたというネタを投稿したのがデザイナーの塚田哲也さん(@dezaiso)です。「高輪門」というデザインを発表しましたが、その門という漢字はカタカナの「ゲートウェイ」で構成されているのです。

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高輪門駅。

 

政界きっての鉄道マニア、石破茂さんと前原誠司さんもこのように批判しています。なんと、与野党両方の鉄道マニアがこの駅名に対して批判しています。


「高輪ゲートウェイ」に“政界の鉄道マニア”も苦言(18/12/05)

 

一方、Wikipediaでも編集合戦がされたようです。詳細はこちら(NAVERのまとめです)。

matome.naver.jp

 

?????「カタカナ使えば頭いいと思ってんじゃねえよ!」

 

遂にネット上で撤回署名運動が始まる

Takanawa get away. ネット署名サイト「change.org」では、12月7日に「高輪ゲートウェイという駅名を撤回してください」と題された署名運動が始まり、初日だけで3500人以上の署名があり、現在では集められた署名は4万人を超えています。

 

www.change.org

この運動についてはJRも静観しており、「高輪ゲートウェイ」駅決定を周知させるつもりであります。

 

なぜここまで批判されるのか?

六角精児さんはこの駅名に対し、「斬新。今までの山手線にない響き。新時代を予感させる名前なのではないか」と高評価を下しましたが、多くはそうではないでしょう。その理由は何なのか、自分なりに考えてみました。

 

①単純に順位が低いのに抜擢されるのはおかしい

公募の意味を全くなしておらず、基本的にトップ5以下はもはや死票と思って投票している人も結構いるはずです。逆に36票も入ったのがおかしい、JRの人が計画的に入れた、出来レースなのではないかという噂が立つほどです。

 

②長くて言いづらい、利用者の使いやすさに即していない

読み仮名だけで10文字ある駅名は、山手線には少し冗長です。路線図や時刻表、車内表示器に組み込む時に、見にくくなるのは確実です。中国語圏の人も、この駅名を漢字にどう訳そうか困っています。また、今後10年20年と使っていくうちに、やはりこの駅名で馴染んでいるなとは、到底思えないと考える人も多いようです。

 

③カタカナは似合わない、センスがおかしい

話題性を狙ってカタカナにしたと言うことですが、逆にチープに聞こえてしまいます。ただでさえ長いのに、高齢者の中にはいまだに「D」を「デー」と呼ぶ人もいるようですから、彼らにとってはより言いにくくなりそうです。また、奇をてらってカタカナ駅名を狙っていくのは、時代遅れだと言います。

 

④地域(特に高輪・芝浦の本来のイメージ)に定着していない

特に高輪は高級マダムのイメージがある人も中にはいるのじゃないでしょうか。そんな元からあるイメージをぶち壊しに来たと罵っているようにも見えます。また、日本の鉄道史の最初期からある、歴史ある路線の新駅なので、ゲートウェイは蛇足だと言っている人もいます。

 

⑤路線図デザイナーが困る

ここまで長いと、事務処理的にも少し問題が発生してしまうようです。路線図に、この8文字をどう組み込むかが、路線図製作者の悩みの種となっております。組み込めても、利用者にとって高輪ゲートウェイという駅名が見やすいのかといえばそうとは限らないでしょう。

 

ちなみに、公募はあくまで「駅名を募集します」と言う形なので、選挙ではありません。したがって、1位・上位の駅名を必ずつける必要は極論ないのです。

また、コンセプトが「グローバル ゲートウェイ品川」なのもあり、最初から「ゲートウェイ」を入れるつもりだったという風に言う人もいます。

 

カタカナでも受け入れられやすい例

最近、首都圏近辺でも「天王洲アイル」「東京テレポート」「品川シーサイド」「たまプラーザ」「越谷レイクタウン」など、カタカナを入れた駅名がかなりあり、その多くが平成年間に建設されています。しかし、カタカナ駅名になっても、今回の高輪ゲートウェイのように大騒ぎにはなっていません。これらの名前についてはすでに地区の名前・施設の名前があったのでそれが反映されました。

 

例えば、天王洲アイルは再開発街区の名称であるし、たまプラーザは命名こそ適当(多摩+プラーザ←スペイン語で広場)なものの、そこが地名やその地域を代表する施設であるので高輪ゲートウェイより幾分かは落ち着いていました。ただ、個人的には天王洲アイルには島・中洲という意味である洲とアイルが両方あるのはどうかと思いますけれども、今では板についてしまっています。

 

しかし、高輪ゲートウェイ駅は違います。近くにその名前の地区・施設がないんです。駅ビルの名前を「高輪ゲートウェイ」にすれば問題ないという人も多いでしょうが、JRはそんな駅名発の命名をしないだろうという考えが強いでしょう。

 

高輪ゲートウェイ駅発表翌日に発表された、「虎ノ門ヒルズ」駅について

一方、2018年12月5日、高輪ゲートウェイ駅の発表翌日に、東京メトロ日比谷線の神谷町〜霞ヶ関駅間にできる新駅の名前が決まりました。「虎ノ門ヒルズ」駅です。言わずもがな、すぐ近くの超高層ビル群「虎ノ門ヒルズ」にちなんだものです。

 

ネットの反応は、「ほとんど違和感がない」など、「高輪ゲートウェイ」に比べて肯定的な意見が多いです。すでに有名な「虎ノ門ヒルズ」のイメージが強い新駅では、受け入れられやすいようです。カタカナの「〇〇ヒルズ」のネーミングは六本木ヒルズですでに知られているので、街の人との感覚とも一致しているのではないでしょうか。

 

一方、「銀座線虎ノ門駅の乗り換え駅なら虎ノ門ヒルズではなく虎ノ門駅にした方がいいのではないのではないか」という意見も確かにあります。虎ノ門ヒルズという駅名は明確さ、わかりやすさを優先したということですし、街と一体となった駅作りを東京メトロも推し進めております。溜池山王・国会議事堂前のように駅名が違っても乗換駅になっているケースもあるので、高輪ゲートウェイよりもだいぶ受け入れられたのではないでしょうか。虎ノ門虎ノ門ヒルズ駅間は徒歩435m(7分)なので、駅名が違ってしまうのはよくあることなのかなと思います。

 

虎ノ門ヒルズ駅の駅ナンバリングはH06。元々霞ヶ関駅駅ナンバリングでありましたが、霞ヶ関駅以降は一つづつナンバリングをずらしています。

個人的にはこれに関しては、案内が大変そうでしょうが、駅ナンバリングが有効的に使われるシーンはなかなかないので、お金はかかってしまいそうですが、営業にさほど影響はないかと思います。

 

ちなみに、先ほども出てきた塚田哲也さんは、虎ノ門ヒルズについても「虎ノ門丘」というデザインを公表しています。

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虎ノ門丘駅。

他のカタカナ駅名、公募についても調べてみました

E電・今に始まった事ではないネーミングの失敗

Twitterの中では、「E電の失敗に懲りていない」という意見もありましたが、これはどういうことでしょうか。実は、過去にも公募をしたのに下位の意見が採用されることもありました。

 

国鉄の近郊区間電車のことを「国電」と読んでいますが、1987年、JRが分割民営化された際に、この名前も公募で募集しました。およそ6万件の応募の中で、「民電」、「首都電」、「東鉄」、「日電」、「民鉄」と続くのですが、20位の「E電」が抜擢されました。

 

大々的に取り上げられても、結局E電の役割は「JR線」などに奪われ、死語になっていきました。そもそもどの区間が「E電」なのか曖昧であったのも、廃れた原因の一つです。

 

E電という言葉は、今はもはや死語の代名詞でありますが、およそ30年後の2016年、JR東日本が「首都圏エリアへ 駅ナンバリングを導入します」というニュースを伝える時に、最初の導入エリアについて、電車特定区間を、E電区間という風に言っています。

対象駅 首都圏エリア 276駅 ※電車特定区間(E電区間)の各駅へ導入します。

https://www.jreast.co.jp/press/2016/20160402.pdfより

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上は、電車特定区間全図。これだけがE電なのでしょうか。

 

一位が採用されない!列車の愛称名

1988年に運行を開始した上野〜札幌間を結ぶ寝台特急北斗星」(2015年運行終了)は、元々一位は「北海」でありましたが、公募108位の「北斗星」(15票)になりました。

 

2002年、東北新幹線八戸開業に合わせ、新たな速達種別の愛称を決定する時、例のごとく公募したら、19位の「はやて」が採用されました。

 

2011年、新しい東北新幹線の種別は、公募順位7位の「はやぶさ」に決定しました。

 

特に大きな批判は起こっていないですが、一位が採用されたことはありません。

秋田新幹線の愛称は、あきたこまちの影響か、一位の「こまち」となった、新幹線ではそのくらいですかね。

 

まとめ:批判が多い「高輪ゲートウェイ」駅。今後どのように評価されるか見守っていきたい

平成最後のJR新駅名発表(?)について、まとめてみましたが、いかがだったでしょうか。大事なのは、JR東の公募は、絶対に一位が選ばれるわけではないので、あてにしない方がいいと思います。公募は選挙ではありません。その認識を持っていただきたいものです。しかし、それ以外にも冗長で使いづらいということなので、批判が続いているようです。

 

物議を醸した駅名ではありますが、やはり天王洲アイルとか越谷レイクタウンも板についてしまっているので、この駅名も何年かすれば、同様にゲートウェイとして板についてしまうのかなと思います。大方の人は、駅名の冗長さを気にしないわけですから。

 

個人的は意外といいかと思ってありますが、駅名などの発表にここまで反対意見が出るのはなかなかないので、私としては、このまま高輪ゲートウェイ駅を前向きに見守っていきたいと思います。

 

また、鉄道唱歌でも、高輪の景色を見て「名は千載の後までも」と歌っている通り、名前は未来永劫に残ってゆくものなので、共感を得やすいネーミングをJRにはお願いしたいところです。