Wisdom Station 三元乗換点

Wisdom Station SanGen Transfer Point

放課後に出雲から夜汽車で上京してきた【3〜4日目】

友人に誘われ、放課後直接出雲に行った旅行。帰りはあの寝台特急サンライズ出雲号で帰りました。すでに多くの方がサンライズを紹介されているので、一部設備の紹介は省略します。それよりも、今回の記事ではノリで寝台列車デビューするとどういう心情になるかについて重きを置きたいと思います。

 

※冒頭、2枚目のサンライズの顔が写っている写真は友人撮影・提供です(彼撮影の動画から切り抜きました)。

 

第一回↓

sangen03.hatenablog.com

 

 

サンライズ号の座席を得る戦いと報酬

サンライズの乗車はもはや戦争です。その戦争は乗車の1ヶ月前から始まります。座席の争奪戦が行われるのです。昭和の時代には多数走っていた寝台列車ですが、北海道新幹線が開通して以来、定期列車として走る夜行列車としてはサンライズが唯一となっています。その希少性ゆえ、人気が高まっているのです。

 

特にA寝台やサンライズツインなどの座席は数が少ないため繁忙期には発売開始直後に席が埋まるほどのレベルです。でもなんだかんだ直前キャンセルが出ることがあり、そのキャンセルを拾い損ねられたのか、一部空いている座席がありました。

 

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そしてもう一つの戦争がシャワーカード戦争です。一つの機械ごとに20人程度しか売られないので始発駅に30分前くらいから並ばないと手に入れられません。4号車のところに確実に小銭330円を握って待機した方がいいです。

 

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シャワーカード販売機を宍道松江間で撮影。途中駅からの乗車では入浴はすでに済ませておくといいでしょう。乗車当該は宍道までに売り切れました。

 

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しかし、それらの課題を勝ち抜いてきたもののみに得られるリターンがあります。本当に横になっていいんですか?と。本当に合法的に列車で寝ていい列車があって東京まで運んでくれるのかと思いました。感動的ですよね。この感動は一生ものです。

 

そして一人当たりの空間が広々としている。この部屋はいわゆる平屋ですが、平屋だと特にそう感じます。頭を上げてもぶつかりません。ノビノビですら横になれる環境が整っていますからね。夜行バスでもこんなに広々としている空間はないですよ。

 

「往路」に乗車した新幹線のぞみや特急やくもでは、カーブを高速で通過するために車体を傾ける車体傾斜装置*1を採用していて、これが搭載されている車両は酔いやすいという傾向と対策があるんですね。

 

だから車体傾斜装置やバス、船などではなるべく安静にしていた方がいいというのがこの旅で得たライフハックなのですが、サンライズは車体傾斜装置がありません。時間はかかっても、酔いにくい設計にされててありがたいです。

 

それでも寝台列車ですから、線路の上を走っているわけで、多少の揺れは存在します。特に伯備線とかだと車体がかなり揺れるので慣れない人は気をつけたほうがいいです。でもすぐ慣れますよ。

 

シャワー、洗面台設備を使う

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例の6分しか使えないシャワー。私は水を流す時間は3分弱で使い終わったので、充分と言えます。ボタンカバーが外れないように、そして、浴室洗浄で水を撒いた後に強い風が吹いて音が凄まじいので気をつけましょう。例の弱風ドライヤーですが、僕はいつもドライヤーなんて使わないのでむしろ風があって助かりました。

 

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洗面台です。鏡で後ろの人が映る位置に2つあるのでカーテンを閉められますが、閉めるところの金属が重くてキーキー言うので気をつけましょう。また、トイレは至って普通の洋式便座でした。鍵をかけ忘れないようにしましょう。

 

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そうそう、サンライズ乗車に欠かせないのが、トラベルセットです。A寝台以外は(人によってはA寝台でも)アメニティが配布されませんのでね。出雲市のハートインでこんなものを400円程度で購入。タオルと歯ブラシが入っています。松江、米子、高松でも売っているので、見かけたらいかがでしょうか。

 

国宝級のお寿司

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出雲市は18時52分に出発するため、ご飯を食べていません。上田家寿司で寿司を調達してきました。理由は、友人が「スーツの動画のコメント欄でこの寿司屋を絶賛しているのを見たから」らしいです。他の寿司屋を選ぶ案もありましたが、1200〜1300円程度で八貫の寿司を購入してサンライズの車内で一緒に食べました。

 

これが国宝級のうまさなんですね。そこらへんの安物のチェーン店とは話が違うわけで、値段の3倍以上のクオリティがあります。肉厚で、素材の旨味が際立っています。僕が苦手な穴子もすんなり食べられました。しかも醤油も甘味があって、このすし屋の抜かりもないこだわりようが感じられます。8貫しかないのにとてもお腹いっぱいになります。サンライズ出雲で親友と食べたからという効果もあるかもしれないですが。

 

その友人ですが、「もうチェーン店の寿司は食えない」「この寿司を食いに行くためだけに出雲市に行く価値ができた」とまで発言しています。それは流石に言い過ぎだと思いますが、それだけこの寿司屋がうまいという話なわけです。出雲市にはしーじゃっくとか他の寿司屋もあって気になってたんですがねえ。島根県日本海に面していて海産物がたくさん取れますから、いずれにしろいい地魚が待っているはずです。例えば、アジはこれからの夏が旬です。

 

走るプラネタリウムサンライズ出雲

それから、サンライズ出雲は、星空観察ができるのが大きなポイントです。そもそも普通の電車は、車内では電気が点いていて星の光を伺うことは至難の業ですが、サンライズだと全部の電気を真っ暗にすることができ、特に伯備線内だと星の光が見えるほどにまでなります。下りだと東海道線を走るので沿線はどこも光だらけです。

 

特に星空観察をするには、2階席に座るとよく見えるでしょう。窓が天井側に一部湾曲していて、星を見やすい形になっています。

 

特に伯備線区間ではカーブが多く、列車が進行方向を変える度に星の配置が変わり、いろいろな方位の星をたくさん眺めることができます。まさに走るプラネタリウム。これは予想外でした。

 

そして東京、横浜ではまず見られない星の量です。多分100個以上はあります。星の数ほどとはまさにこういうことを言うんですね。都会でもせいぜい2等星まで、普通は1等星とか、特に大気が汚れている都市だと太陽と月以外わからないみたいなこととかもありますからね。光害と言って、街中のネオンやLEDで視界が妨害されているのも大きな原因です。

 

一方、サンライズ車内からは概ね4等級レベルまで見えている感じがします。ずっと見てたら視力回復しそうですよね。この光景は貴重です。

 

なお、写真でその満天の星空の様子をお届けしたかったのですが、写真を撮っても真っ暗にしかなりません。まだまだ機械も人間に劣っているわけです。まさに乗った人しか味わえない景色であるということですね。また、写真を加工する技術も乏しいので、電気を消した部屋と星空の様子を想像図でお届けします。

 

友人の部屋に入って、総社駅手前まで男二人で星空をしばらく眺めていました。何者とも言い難い幸福感が感じられます(別にゲイ的な意味合いではないですよ、私はそういう性的指向じゃないんで)。

 

呼吸する長距離列車

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サンライズは平衡感覚、味覚、視覚的以外にも新たな刺激を与えてくれます。

 

耳を澄ませると、「がたん、がたん、がたん、(休符)」、という繰り返しのリズムが聞こえます。なんだか呼吸をしているみたいですよね。友人がそのリズムに合わせて指で壁をタップしていましたが、もう何度も乗っている人には刻み込まれている響きなわけです。

 

乗車した号車はサハネ(モーターがない寝台普通車)なのでうるさくなくただレールの切れ目を跨ぐ音が聞こえます。車輪に近い車端部の方がこの音をよく聞くことができます。

 

特に蒸気機関車とかがそうですが、列車って生き物感がありますよね。僕は子宮の記憶ないんですけど、子宮にいるような感覚ってこういうことなのかなと感じます。母なるサンライズというわけです。

 

田舎に対する意識が変わった

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新見停車手前ではカエルの音も聞こえますし、奥出雲、大山、美作の地域では豊かな自然が育まれていることが感じられます。

 

今までこういった地方はなんの取り柄もないと感じていましたが、今回の旅で地方に対してのイメージが変わりました。やっぱりいろんな地域が活動をして街を盛り上げていくのが里山の環境を守るのに大きな役割を買っているのであると感じました。舞岡や円海山などの多少の自然風景がある横浜でもこのレベルの田舎はありません。田舎のスケールが違います。日本の国土の2/3は森とよく言われますが、その意味を実感しました。日本もまだ捨てたもんじゃないですね。まあそれをちゃんと整備できているかは話が別ですが。

 

何か持続可能な暮らしにつながるヒントを得たような気がしますね。厳密にいうと、ヒントというか、そもそも本州の里山の環境はどんなものか検討がつかなかったので、この環境を見ることができたのは良かったです。

 

忘れたものを取り戻しにきた旅

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今回の出雲旅は、我々が都市生活の中で忘れてきたものを取り戻しにきた旅だと言えると思います。地方都市や田舎の人の暮らしている生活環境など、自分の知らない世界に出会えましたね。シベリアのように過酷すぎる環境ではなく平和な環境、人の影響を受けた里山が築かれている様子が感じられます。

 

その感動も、動画だったりインターネットを見て下調べしすぎると感動は薄れる傾向があります。知らない土地にもその土地ならではの魅力もあるものです。そもそも、インターネットに載っていない、探せない内容も世の中にはあるわけです。

 

 

そして、私はもう一つ大事なものを取り戻すことができました。それは私の友達です。僕は言い方は誤魔化しますが晩熟タイプの人間で、小学校低学年くらいまでは先生の言うことをまともに聞けなかったり人とのつながりも軽薄でありました。

 

だから義務教育時代までまともに友達というのがいたことを認識したことがありません。だから友達なんて一生できないかなとも思っていましたが、いや、いるもんですね。個人的に自分の10代のイシューの一つは友達作りだったんですが、ここに一つの成功の形を見ることができました。

 

特に学校は色々な人がいる環境なので、うまく行かなくて当然です。色々な人が地場の偏りはあるにしてもわりかし色んな所得層・趣味指向の異なる人がいると問題が起こる。仲が悪くてもそれら問題を調整して解決することが、学校の勉強に次ぐ大きな目的だということに気づいたんですね。「一年生になったら友達100人できるかな」など無謀以外の何者でもありません。特に「会ったら友達」みたいな考えでない限りきついです。

 

まあ最近だとTwitterなどのインターネット上のつながりなら友達(FF)100人は割と簡単に行くんでしょう*2し、リアルよりも少しだけ関係を拡張できようとは思いますが、それでも人付き合いは限られた人だけで十分です。だからこうして一緒に旅に行ってくれて、困った時に相談に乗ってくれる人が数人いたらいいのかなレベルですよね。だからそういう人たちの存在はものすごく大事にして気にかけていくべきだと思いました。ただ僕は人間関係の維持にかなりの作業領域を使用する傾向があるので、無理はせず、ただ真に孤独にならないようにするべきだと感じました。今後ともよろしくお願いします。

 

この旅に誘ってくれた友人曰く、彼が最初に誘おうと思った人が私だったそうです。世の中生きているといいこともあるもんですね。本当に誘ってくれてありがとう。もちろんリアルでも言っております。

 

都会へ

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総社市街に突入。ここまで来ると、もう星が見えなくなりますし、都市の光や喧騒が感じられるようになりました。歯磨きをして、岡山駅の空気を吸います。時刻は22時半を回ろうとするところ。いつもだったら怠惰で次の日の午前1時まで食い込んでしまうのが日常ですが、今日はここで寝ることに。もうちょっと早く寝たかったけど。

 

岡山の自動放送が終わると放送も私も眠りにつきます。雨の音かなと思って気づいたらよく晴れていて丹那トンネルの手前でした。およそ7時間、少ない気もしますが割としっかり寝ました。サンライズは進行方向左側だったこともあり、とても快適に眠れましたね。

 

根府川の海を撮影。実に宍道湖ぶりの太陽です。これを見るためのサンライズですよ。そろそろチェックアウトの準備をしましょう。東京下車なので少し猶予があります。

 

旅が終わるのが惜しくて

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帰ってきましたね、東京。いつ見ても大都会です。ここから仙台行きの特急ひたちが出ていくのを見て行きましたが、遠さは出雲市の比じゃないですよ。この後新幹線で長野に行って善光寺を見てこようかと思いましたが、金と情報量がオーバーフローしているので諦めることに。

 

友人はこの後大学に行くそうで(流石に今回は直行じゃないですが、直行の場合もあるんでしょう)ここで解散しました。

 

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せっかく東京駅に来たので、東京駅の中を少し探検していました。グランスタ東京などの駅の中にあるレストラン街はありませんが、NewDaysやブックカフェが何軒もあります。八重洲中央口のほんのり屋の牛タンむすびが美味しそうだったので、買ってみました。一個350円もとりますが、本当に美味しかったです。やっぱり美味しいもんはこれだけとられるもんなんですよ普通は。

 

この後は大井町に用があったのでここで復路の切符の使用を終え*3、鶴見の自販機で釣り銭70円をぼったくられ*4、その途中に珍しい南行のJO品川行きやJK東神奈川行きに乗りつつ、横浜からバスで帰宅しました。東京についた後もなんだかんだ東海道本線緩行を楽しんで東京から家まで4時間くらいかかりましたね。旅を終わらせたくないからなんだかんだ引きずってしまうものです。

 

*1:車体傾斜式車両 - Wikipedia 参照。やくもは特に自然振り子なので酔いやすい傾向が強い

*2:まあ僕にとってはその目標すら難しい気がしますが…目指さなくていいよね

*3:特定都区内は通過する在来線優等列車に乗るために折り返し乗車をすることができます

*4:実はこの時交通系ICカードを所持しておらず現金払いでした。電子決済があるところではちゃんと電子決済にしないとぼったくられることがあることを学びました